2024 10,24 21:21 |
|
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 |
|
2007 03,25 21:09 |
|
……来る。
それが分かった瞬間に、辺りに緊張が走った。 一方的な侵略と虐殺。 加害者と被害者が悲しいくらいに明瞭な、変らざる、この関係。 それは、ずっと続いていた。 僕が生まれる前から、僕の子供が消えてからもずっと、変らないであろう螺旋。 それは、今日も同じこと。 しとしとと雨が降る中、それでも奴等はやってきて僕らを蹂躙する、いつも通りの朝。 屠られていく仲間を知覚しながら、それでもどうしようもない、僕もまた黙したままその順番を待つしかない現実を嘆きながらただ時が過ぎていく中。 何かが、近づいて来たのが分かった。 それは、普段僕らを襲うケダモノ達と間違いなく同じ種族でありながら、明らかに格が違っていた。 その目が、爪が、禍々しい笑みを形作る口が。 今までのどのケダモノよりも、凶暴で残忍であるということを告げていた。 なんということだ。まさか、こんな奴らがいたなんて。それも、三匹も。 絶望。 そんな言葉が脳裏を過ぎる。 僕と繋がった仲間もまた、同じ事を感じているようで、小さく震えているのが分かる。 そして。 そして。 欲望が溢れ出すままに、奴等は襲い掛かって来た。笑えるくらいに、予想通りに。 凄まじい速さで次々と仲間が刈り取られて行く。 奴等は、ほんの子供には手を出さないものの、まだ若い少年や少女にまでもその鎌を容赦なく振るっていく。 救いは、ない。 哂いながら奴等は拘束した仲間の首をもぎ取って、その忌まわしい爪を朱に染めていく。 赤が散らばる頭を悪趣味にも保存し、その数を数えては哄笑う、そのおぞましき姿。 そして、ついに一匹がこちらに目を向けた。 目が細まる。嗚呼、どうやら僕は気に入られたようだよ。 せめて、隣に、後ろに居る僕の家族は見逃されるといいけど。 諦観と共に祈ると……隣に居た僕よりまだほんの少し幼い家族が、奪われた。 ……畜生、畜生畜生ちくし ……僕もまた、喰われたようだ。 頭がないのに、意識がある。不思議な感覚。でも、幸いな事に痛みはない。 ゆらゆらと仲間の残骸と共に酸の海に揺られながら、僕は僕を……いや家族を喰ったこの化物を呪う。 僕の身体は、このまま溶けていくだけだろう。僕には、我らが王のような覇気もなければ、毒もないから、それもまた決めれた運命。 だけど、だけど。 この化物達は、あまりにも多くを狩り取り過ぎた。 僕らの、小さな黒い粒子。僕らの中で、最も堅い未来への鍵。 これは、中々溶けないよ? 多分、この化物はあてが外れて、腹痛を起こすことだろう。 さまあみろ、だ。 そう思うと、少しだけ、本当に少しだけ胸が晴れた。 折角の良い気分だ。 僕はこのまま、感覚を閉じることにした。 PR |
|
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |